内容紹介
本物のデザインとは、家づくりに関わるすべてての人たちを幸せに導く力だと考える筆者。
山梨県と長野県を中心に、伝統的な日本木造建築設計を使った家づくりを行っている人物だ。
大手ゼネコンを退職後、日本木造建築設計を学び、実際にデザインしていくなかで、日本の伝統的な木造住宅デザインが美しく、機能性が高く、そしてつくり手も住み手も両方を幸せにできることに気づいた筆者。
しかし建築業界全体を見ると、見た目の新しさや突飛さの目立つデザインばかりがもてはやされている現状がある。マスコミで取り上げられるような変わったデザインの家こそが優れたイマドキの家なのだと、住み手だけでなく建築デザイナーすらも思い込んでいる。
流行のデザインを考えなければと必死になり、悩みながら仕事をしている人が多く、建築デザインの仕事は混迷の時代を迎えてしまっている。
建築デザイナーがなすべき仕事とは何か。
目新しいデザインは確かに印象に残るが、はたして本当に快適な暮らしを実現するのだろうか。
「映える」家で暮らすことが、本当に住み手を幸せに導いてくれるのだろうか。
日本で生きる私たちの生活スタイルに合わせて、長い時間をかけ磨き上げられた伝統的な日本建築の知を学び、広げていくことで、この建築業界の状況を打破したいと考える筆者。
「建築デザイナーにはつくることを心から楽しんで欲しい。そしてつくったもので人を幸せにすることを当たり前にして欲しい」という言葉は、家づくりに関わるすべての人が幸せになるにはどうしたら良いのか、日本の木造住宅デザインが目指すべき理想の姿とは何なのか、人を幸せにする家とはどういうものなのかを考えてみるきっかけになるはずだ。
【目次】
第一章 日本の伝統的木造建築との出会い
■物づくりが好きな少年が建築家になるまで
■退職―そして移住、木造建築デザイナーへの第一歩
■恩師である建築士・吉田桂二先生との縁
第二章 日本木造建築の素晴らしさ、ルールの重要性
■日本木造建築はなぜ美しいのか?
■「一間間(いっけんま)グリッド設計法」なら誰でも美しい建物が建てられる
■日本木造建築のルールを守れば、最小の労力で最大の効果が得られる
第三章 作法の断絶がもたらした混迷の時代 ―求められる伝統の再発見
■消えゆく日本木造建築の技術
■伝統技術が失われた先に、苦しむデザイナーが見えてきた
■私が思うデザインとは
■日本木造建築の良さを理解してもらい、広げていくために
【著者プロフィール】
和氣 正頼(わき・まさより)
一級建築士
住宅デザイナー
1971年生まれ。東京理科大学理工学部建築学科卒業後、大手建設会社に就職し、大規模建築の現場管理を経験。30歳で退職し、東京から山梨に家族で移住。2年間大工見習いをしながら木造建築を学び直す。33歳で建築家吉田桂二氏に出会い、その後10年に渡って木造建築設計を学ぶ。並行して長野県、山梨県の自然豊かなエリアで150棟以上の木造住宅デザインの実績を残す。2016年建築設計事務所ルスカデザインを開設。その後、毎月プロ向けの住宅デザイン塾を連続開催140回以上。2021年ルスカデザイン法人化。同時に「地域工務店のためのデザインパートナーサービス」をスタート。現在はルスカデザイン株式会社代表取締役として、日本各地の木造住宅デザインに関わっている。